「トラピストビールって名前は聞いたことあるけど、普通のビールと何が違うの?」
そんな疑問を持っている方にこそ知ってほしいのが、修道院で丁寧に造られるこの特別なビールの魅力です。
トラピストビールは、味の奥深さはもちろん、背景にある“ストーリー”も一緒に味わえるのが魅力。
この記事では、トラピストビールとは何か、どんな種類があるのか、味や香りの特徴まで、初心者にもわかりやすく紹介します。
ビール好きの方も、ちょっと贅沢な一杯を探している方も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
トラピストビールとはどんなビール?
最初に知ったときは「トラピストって修道院の名前?」と疑問に思いました。
でも調べてみると、ただのビールじゃない、特別な背景があるビールだったんです。
トラピストビールは、実際に修道院で造られているビールのことです。
ただし、どの修道院でもいいわけではなく、「トラピスト会」という修道会に属し、厳格な条件を満たしている必要があります。
その条件には、ビールの製造が修道院内またはその近くで行われていること、修道士が製造に関わっていること、そして利益が修道院の維持や慈善活動に使われていることなどが含まれます。
こうした条件をクリアしたビールだけが、「Authentic Trappist Product」という認証を受けることができるんです。
つまり、味だけじゃなくて、背景や作り手の姿勢も大切にされているビールなんですね。
初めて飲んだトラピストビールは、ベルギーの「シメイ」でした。
グラスに注ぐと香ばしい香りが広がって、それだけで気分がちょっと上がったのを覚えています。
トラピストビールの種類と特徴
「トラピストビール」とひとことで言っても、実はいくつか種類があります。
それぞれに味わいや香りがまったく違っていて、飲み比べるのも楽しみのひとつです。
シメイ
シメイは、トラピストビールの中でも特に知名度が高い銘柄のひとつです。
赤、白、青の3種類がありますが、個人的に印象に残っているのは「ブルー(グラン・レゼルヴ)」です。
アルコール度数は9%と高めで、飲んだ瞬間にふわっと広がる熟成感に驚かされました。
口に含むとドライフルーツのような甘さが感じられ、後からじんわりとスパイシーさが立ち上がってきます。
味に奥行きがあるので、時間をかけてゆっくり楽しむのがおすすめです。
飲み進めるうちに、まるで本を読みながらワインを傾けているような、静かな余韻が残ります。
オルヴァル
オルヴァルは、他のトラピストビールとちょっと違った個性を持っています。
ボトルの形状からしてユニークで、グラスに注いだときの香り立ちも独特。
鼻を近づけると、クローブやスパイスのような香りと、ちょっとだけ革のようなニュアンスも混ざっています。
味わいは軽めでありながら、口の中で発酵の風味がじわじわと広がっていく感覚。
最初は戸惑う人も多いかもしれません。
でも不思議なことに、時間が経つと「また飲みたいな」と思わせてくれるんですよね。
クセになるというのは、まさにこのことかもしれません。
ロシュフォール
ロシュフォールは、心と体をゆるめたい夜にぴったりのビールです。
数字で区別されるタイプ(6・8・10)があり、数字が大きくなるほどアルコール度数も高くなります。
個人的には「10」が特に好きで、濃厚なキャラメルのような甘みと、ほんのりチョコレートっぽい苦味がクセになります。
ある冬の夜、暖房のきいた部屋で毛布にくるまりながら飲んだロシュフォール10は、ちょっとした癒しの時間でした。
外の寒さを忘れて、グラスを手にしたままぼーっとできる。そんな静かなひとときにぴったりです。
ラ・トラップ
オランダのトラピスト修道院が造る「ラ・トラップ」は、どこか優しくて親しみやすい味がします。
トリプルやクアドルペルなど、種類ごとに個性がありますが、私が初めて飲んだのは「ブロンド」でした。
軽やかでフルーティーな香りと、微かに感じる麦の甘さ。
あまりビールが得意じゃない人でも、これは飲みやすいと感じるかもしれません。
休日の昼下がり、テラスでのんびりとグラスを傾けるような、そんなイメージがぴったりです。
ウェストマール
ウェストマールには「ダブル」と「トリプル」の2種類があります。
どちらもよくできたビールですが、とくに「トリプル」はシャープな飲み口で印象に残りました。
最初の一口から心地よい刺激があって、すっと抜けていく余韻が美しい。
何かに集中したいとき、たとえば深夜に考えごとをしながら飲むと、頭がスッキリしてくるような感覚があります。
派手さはないけれど、しっかりとした土台を感じさせてくれる、まじめな一本だと思います。
このように、トラピストビールにはそれぞれ個性があり、どれを選ぶかによってまったく違う体験ができます。
それがまた、飲み比べる楽しさでもあるんですよね。
トラピストビールの魅力と楽しみ方
トラピストビールは、単なるクラフトビールとは違う独特の存在感があります。
その理由のひとつは、修道院で造られているという背景。
信仰と労働が結びついた環境の中で、時間と手間を惜しまず造られたビールだからこそ、飲む人の心にもどこか静かな余韻を残してくれるのかもしれません。
飲み口の奥に、修道士たちが重ねてきた「時間」や「祈り」がにじんでいるように感じることがあります。
だからこそ、ただ酔うためではなく、「味わうためのビール」として楽しみたい、そんな気持ちになるのです。
専用グラスで香りと泡立ちを楽しむ
トラピストビールをもっとおいしく楽しむためにおすすめしたいのが、専用グラスでのテイスティング。
各修道院は、そのビールの特徴を最大限に引き出すために専用グラスを用意しています。
たとえば、シメイのゴブレット型グラスは泡立ちを美しく見せてくれますし、オルヴァルのグラスは香りがふわっと広がりやすい形状になっています。
「グラスなんてなんでもいい」と思いがちですが、注いでみると違いは歴然。
泡の持ち方、色の見え方、香りの立ち方……どれもビールの印象を左右します。
ちょっとしたこだわりが、飲む時間を特別なものに変えてくれるんです。
冷やしすぎない温度管理
意外と見落としがちなのがビールの温度管理。
一般的なビールはキンキンに冷やして飲むことが多いですが、トラピストビールは少し違います。
冷蔵庫から出して10分ほど置いておくと、香りや甘み、苦味などの複雑な味わいがよりはっきり感じられるようになるんです。
たとえるなら、寒さにこごえた体が徐々にあたたまり、やわらかくなっていくような感覚。
この“開いていく”時間もまた、トラピストビールならではの楽しみ方だと思います。
食事とのペアリング
トラピストビールは食中酒としても優秀です。特に相性がいいのは、チーズや煮込み料理などの濃厚な味わいの料理。
濃い味に負けないコクと深みがあるので、組み合わせによってさらに味わいが引き立ちます。
おすすめは「ブルーチーズ×ロシュフォール」や「ビーフシチュー×シメイブルー」など。
甘さと塩気、苦味と旨味のコントラストがクセになります。
ゆっくり味わいながら、料理とビールのバランスを探るのも楽しい時間です。
ラベルやボトル
味や香りだけでなく、ラベルやボトルデザインにもぜひ注目してほしいところ。
どのトラピストビールも、装飾が控えめでありながら品があり、修道院の静謐な雰囲気をまとっています。
シンプルでありながら存在感があり、テーブルに置くだけで特別な雰囲気を演出してくれる
。飲み終わったあと、ボトルを飾っておきたくなるようなデザインも多いです。
贈り物としても喜ばれるのは、こうした美しさやストーリーがあるからかもしれません。
特別な一杯で、日常に静けさを
忙しい日常のなかで、ふと立ち止まって自分の時間を過ごしたくなる瞬間ってありますよね。
そんなときにぴったりなのが、トラピストビールです。
私は最初、「ちょっと高いかも?」と感じたのですが、飲んでみたらその価値に納得。
お酒というよりも、「丁寧に造られた時間」を味わっているような感覚になりました。
派手さはないけれど、確かな満足感がある――そんな一杯が欲しいとき、トラピストビールはきっとその期待に応えてくれるはずです。
まとめ
トラピストビールは、ただ「おいしい」だけでなく、歴史や造り手の想いまでもが詰まった特別なビールです。
修道士たちの手によって、伝統と信念を守りながら造られるその一杯には、他のビールにはない静けさと深みがあります。
グラス選びや温度、食事との組み合わせにこだわることで、さらに豊かな時間を楽しめますよ。
種類によって味わいも異なるので、自分好みの1本を見つけるのも醍醐味。
日常に少しだけ“上質な時間”を取り入れたい方は、ぜひ一度トラピストビールを試してみてはいかがでしょうか。
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