近年、クラフトビールの世界で注目を集めているのが、ニューイングランドIPA(NEIPA)とヘイジーIPAです。
どちらも濁りのある見た目とフルーティーな香りが特徴で、飲みやすくて人気がありますが、それぞれには微妙な違いがあります。
この記事では、ニューイングランドIPAとヘイジーIPAの特徴を徹底解説し、日本のクラフトビール市場でのIPAのトレンドやおすすめビールもご紹介します。
これからIPAを試してみたい方や、さらに深く楽しみたい方に役立つ情報をお届けします。
ニューイングランドIPAとヘイジーIPAの違い
ニューイングランドIPA(NEIPA)とヘイジーIPAは、どちらも濁った見た目とフルーティーな味わいが特徴的なIPAスタイルですが、その成り立ちや特徴にはいくつかの違いがあります。
さらに深堀りしていくと、味わいや製法、そしてそれぞれのビールスタイルに求められる技術がどのように異なるのかが見えてきます。
ニューイングランドIPA(NEIPA)の特徴
ニューイングランドIPAは、アメリカのニューイングランド地方で発展したIPAスタイルです。
このビールは、従来のIPAに比べて非常に濁りが強いのが特徴です。
その濁りは、ホップや麦芽だけでなく、使用する水の成分や、醸造過程での酵母の働きによって引き起こされます。
特に、NEIPAでは、ホップのフレーバーが強調されるため、トロピカルフルーツや柑橘系の香りが鮮明に感じられ、飲み口は非常に滑らかで柔らかい印象を与えます。
このスタイルで最も注目されるのは、「ドライホッピング」という手法です。
ドライホッピングとは、発酵が終わった後にホップを加える技術で、これによりビールのフレーバーやアロマが豊かに引き出されます。
ドライホッピングを重視することで、NEIPAはホップの香りを強く感じられる一方で、苦味を抑えることができ、フルーティーで飲みやすい味わいに仕上がります。
また、NEIPAはアルコール度数が比較的高めのものも多く、アルコールの存在感がある一方で、そのフルーティーさや滑らかな口当たりが目立つため、飲みやすさとアルコール感のバランスが絶妙です。
ヘイジーIPAの特徴
ヘイジーIPAもニューイングランドIPAと非常に似ている部分がありますが、もう少し異なる点がいくつかあります。
ヘイジーIPAという名称自体が「曇った」「ぼやけた」という意味を持っており、ビジュアル的に非常に濁りが強いことを示しています。
NEIPAよりもさらに濁りが強いことが多く、この濁りは主に酵母や麦芽、さらにはビールの成分によって引き起こされます。
ヘイジーIPAの製法においては、ホップの使い方が大きなポイントです。
ヘイジーIPAでは、ホップの苦味を抑え、代わりにフルーツ感を強調するため、ホップを多く使用します。
ですが、使用するホップの種類や量が微妙に異なり、NEIPAよりも若干苦味を強調することがあります。
これにより、ヘイジーIPAはNEIPAよりもほんの少しビターな風味が感じられることが多いです。
味わいの特徴としては、NEIPAよりも少しドライで、ホップのフレーバーと苦味のバランスがやや強調される傾向にあります。
フルーティーで飲みやすい一方、もう少しホップのアクセントを楽しみたいという人にはぴったりのスタイルです。
ニューイングランドIPAとヘイジーIPAの違い
ここまでで紹介したように、ニューイングランドIPAとヘイジーIPAは非常に似ている部分も多いですが、ビジュアルや味わい、製法においていくつかの違いがあります。
ビジュアル
ニューイングランドIPAは、ヘイジーIPAよりもやや濁りが控えめで、色味がゴールドやオレンジ色が強いものが多いです。
ヘイジーIPAは、その名の通り、濁りが強く、オレンジジュースのようなトロっとした見た目のものが一般的です。
ヘイジーIPAは、その濁りがより際立っているため、飲む前からビジュアルで楽しませてくれます。
味わい
ニューイングランドIPAは、フルーティーで非常に滑らかな口当たりが特徴です。
フルーツ感が強く、ホップの香りが前面に出ることが多いですが、苦味は抑えめです。
これに対して、ヘイジーIPAは、少しビターでホップの苦味がしっかり感じられることがあり、フルーティーさと苦味のバランスが取れています。
どちらもフルーツ感が強いですが、ヘイジーIPAの方が、ホップの苦味や渋みが若干目立つことがあります。
製法
両者に共通する点は、ドライホッピングを活用してホップのアロマを引き出すことですが、ヘイジーIPAではホップをさらに多く使用して、苦味とフレーバーを強調します。
ニューイングランドIPAもホップの香りを楽しむことができますが、苦味は比較的控えめで、よりまろやかな口当たりになります。
どちらを選ぶべきか?
ニューイングランドIPAとヘイジーIPAはどちらも素晴らしいスタイルですが、選ぶ際には自分の好みに合わせて選ぶと良いでしょう。
フルーティーで滑らかな口当たりを楽しみたい場合は、ニューイングランドIPAが最適です。
逆に、ホップの苦味をしっかりと感じながら、フルーティーさも楽しみたい場合は、ヘイジーIPAがおすすめです。
また、クラフトビールの世界は進化し続けており、各地のブルワリーでは両方のスタイルを融合させた新しいIPAが次々と登場しています。
新しいビールを試してみることで、さらに自分の好みにぴったりの一杯を見つけることができるでしょう。
日本のIPAの人気とトレンド
近年、日本でもIPAの人気が急速に高まっています。
特にクラフトビールの市場が拡大する中で、IPAはその独特な風味とホップの香りがファンを魅了し、ますます多くの日本のビール愛好者に支持されています。
IPAの中でも、ニューイングランドIPAやヘイジーIPAは特に注目を集めており、そのフルーティーで飲みやすい特性が、日本人の口にも合いやすいと言われています。
日本のクラフトビール市場では、海外からインポートされたものだけでなく、国内のブルワリーが自家製のIPAを作り、個性豊かなビールが登場しています。
例えば、ヤッホーブルーイングの「インドの青鬼」などは、アメリカンIPAとして非常に人気があります。
こちらはホップの香りと苦味がしっかりしており、IPAらしさを感じられるビールです。
一方、最近では日本のブルワリーでもニューイングランドIPAやヘイジーIPAが注目され、各地でそのスタイルを取り入れたビールが提供されています。
これらのビールは、ホップのフルーティーな香りが日本の食文化とも相性が良く、食事と一緒に楽しむことができます。また、ビールの見た目の濁りや、飲みやすさが日本の消費者に受け入れられる要因となっています。
日本のIPA市場は、これからさらに多様化していくことでしょう。
そして、その中でもニューイングランドIPAやヘイジーIPAは、今後ますます人気が高まっていくスタイルと言えます。
日本のIPAの人気銘柄
日本でもニューイングランドIPA(NEIPA)やヘイジーIPAは人気が高まっており、いくつかのクラフトビールブルワリーがこれらのスタイルを手掛けています。
ここでは、日本の代表的なニューイングランドIPAやヘイジーIPAの銘柄をいくつか紹介します。
ヤッホーブルーイング「ヘイジーIPA」
ヤッホーブルーイングは、日本のクラフトビールシーンを牽引しているブルワリーの一つです。
「ヘイジーIPA」は、まさにニューイングランドIPAの特徴を持つビールで、しっかりとした濁りがあり、トロピカルフルーツや柑橘系のフレーバーが豊かに広がります。
ホップの香りと共に、クリーミーで滑らかな口当たりが特徴です。
コエドビール「シングルIPA」
コエドビールは、埼玉県に拠点を持つクラフトビールブルワリーで、その「シングルIPA」は、ヘイジーIPAのスタイルに近いビールです。
フルーティーでトロピカルな香りが感じられ、飲み口は滑らかで、少しドライな後味が特徴です。
苦味が控えめで、フルーティーさが際立つ一杯です。
志賀高原ビール「ヘイジーIPA」
長野県の志賀高原ビールの「ヘイジーIPA」は、しっかりとした濁りとともに、フルーティーでジューシーな味わいが特徴です。
ホップの香りが強く、グレープフルーツやマンゴーのようなトロピカルフルーツの香りが広がります。
飲みやすく、まろやかな口当たりが魅力です。
ベアードビール「ヘイジーIPA」
静岡県のベアードビールもヘイジーIPAを手掛けており、その「ヘイジーIPA」は、香り豊かなホップと、濁りのある見た目が特徴的です。
トロピカルフルーツやシトラスの香りが感じられ、フレッシュで爽やかな飲み口が特徴です。
やや軽めの苦味があり、バランスが良い仕上がりです。
スワンレイクビール「ヘイジーIPA」
新潟県のスワンレイクビールは、「ヘイジーIPA」をラインナップに加え、ジューシーでフルーティーな味わいを楽しむことができます。
濁りがしっかりとあり、トロピカルフルーツのような香りが広がります。
ホップの苦味も程よく、飲みやすいヘイジーIPAです。
ノースアイランドビール「ヘイジーIPA」
北海道のノースアイランドビールもヘイジーIPAを製造しています。
このビールは、非常にフルーティーでジューシーな味わいが特徴です。
オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系の香りに加えて、少しトロピカルなフレーバーも感じられ、濁りのある見た目がビジュアル的にも楽しめます。
ヒビノビール「ヘイジーIPA」
北海道のヒビノビールは、ジューシーでフルーティーな「ヘイジーIPA」を製造しています。
ビールは濁りがあり、ホップの香りとフレーバーが非常に豊かで、トロピカルフルーツやシトラス系の香りが広がります。
少しビターな要素も感じられますが、全体的にはフルーティーさが優先される味わいです。
アサヒビール「スーパードライ ドライブラック IPA」
アサヒビールからもヘイジーIPAに近いスタイルの「スーパードライ ドライブラック IPA」が登場しています。
このビールは、スーパードライの特徴を生かしながら、濁りがあり、ホップの香りが際立つジューシーな味わいが特徴です。
ビターテイストが好きな方にもおすすめです。
富士桜高原麦酒「ヘイジーIPA」
富士桜高原麦酒は、東京・富士山麓に位置するブルワリーで、ヘイジーIPAのスタイルの「ヘイジーIPA」を製造しています。
このビールは、フルーティーでトロピカルな香りが豊かで、ホップのフレーバーが非常に引き立っています。
飲みやすく、しっかりとした苦味が感じられるので、バランスが良い仕上がりです。
IPAを楽しむためのポイント
ニューイングランドIPAやヘイジーIPAを楽しむ際には、いくつかのポイントを押さえておくと、よりその魅力を感じることができます。
まず、これらのビールはホップの香りを最大限に活かすために、新鮮な状態で楽しむことが重要です。
ホップの香りは時間が経つと風味が失われてしまうため、なるべく新しいビールを購入し、早めに飲むことをおすすめします。
また、これらのIPAはそのフルーティーな味わいが特徴ですが、アルコール度数が比較的高いため、少量で十分満足できることもあります。
ゆっくりと味わいながら、香りを楽しんでみてください。
さらに、濁りが強いため、グラスに注ぐ際にはよく振ってから注ぐと、より風味が引き立ちます。
そして、IPAを楽しむ際には、食事とのペアリングも考えてみましょう。
ニューイングランドIPAやヘイジーIPAは、フルーツの香りや甘みが特徴的ですが、意外にも和食との相性が良い場合があります。
特に、さっぱりとした味わいの刺身や寿司、軽い塩気が効いた料理と合わせると、その風味が引き立ちます。
このように、ニューイングランドIPAやヘイジーIPAは、ビールそのものを楽しむだけでなく、食事とのペアリングを楽しむための幅広い可能性を提供してくれます。
日本のクラフトビールシーンとIPA
日本のクラフトビールシーンは、近年急速に発展しています。
その中でも、IPAは特に注目されているスタイルであり、国内のブルワリーでも数多くのIPAが作られています。
日本国内で作られるIPAは、アメリカンIPAをはじめ、ニューイングランドIPAやヘイジーIPAを取り入れたものも多く、そのスタイルごとの個性が楽しめます。
例えば、東京都のブルワリー「クラフトビール・アーキテクト」や「サッポロビール」のクラフトビール部門では、さまざまなIPAが販売されています。
これらのビールは、アメリカのスタイルを取り入れつつも、日本の食文化に合わせた微妙な味わいの調整がされており、日本人向けに開発されたものが多いです。
また、IPAの飲み比べを楽しむイベントも多く開催されており、これに参加することで、さまざまなブルワリーが提供するIPAの違いを学びながら楽しむことができます。
特に、これからIPAを試してみたいと思っている方にとっては、こうしたイベントは一度参加してみる価値があるでしょう。
まとめ
ニューイングランドIPAとヘイジーIPAは、どちらも濁りのあるフルーティーなIPAスタイルとして人気がありますが、その味わいや見た目には微妙な違いがあります。
日本でもこれらのビールは注目されており、国内のブルワリーでも新たなIPAが登場しています。
これらのビールを楽しむ際には、新鮮な状態で飲むこと、グラスに注ぐ際に少し振って香りを楽しむことをおすすめします。
日本のクラフトビール市場は今後ますます多様化していき、ニューイングランドIPAやヘイジーIPAの人気はさらに高まるでしょう。
これらのビールを通して、さらに深くクラフトビールの世界に触れ、楽しみを広げていくことができるでしょう。
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